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2019年度第二種試験問題総評 物理・化学・生物編

2019年度第二種試験問題総評

昨年度までの管理技術Ⅱと難易度は例年並みかと思います。管理技術Ⅱの過去問題で出題された類似問題もあり、また暗記しておけば得点できる問題もあります。

【物理】

問1は壊変に関する問題です。α壊変、β-壊変、β+壊変、EC壊変に関しては壊変により原子番号、質量数の変化はしっかりと覚えておきましょう。また、どの壊変がニュートリノ、反ニュートリノを放出するかも暗記しなくてはなりません。252Cfが自発核分裂により中性子を放出することは試験でも非常によく出題されています。合わせて覚えておきましょう。

問2は連続スペクトルに関する問題です。連続スペクトル、線スペクトルを示すものは確実に暗記しておきましょう。暗記するだけで得点に繋がります。

問3は難しかったかもしれません。KX線はK殻の電子が放出されたときに出る特性X線を表しています。特性X線、オージェ電子は非常に出題頻度の高い分野ですのでしっかり勉強しておくことが重要です。

問4はW値に関する問題です。W値、ε値は定義をしっかりと覚えておきましょう。W値は荷電粒子にのみ用いられる用語です。W値を使用する計算問題も時々出題されます。

問5は重荷電粒子の阻止能に関する問題です。2012年度の第二種試験の管理技術Ⅱでも同様の問題が出題されています。荷電粒子の阻止能に関する公式を覚えておくことが大切です。

問6はコンプトン散乱に関する問題です。137Csのコンプトン散乱に関して、選択肢BやDのような計算問題は第二種試験では過去幾度と出題されています。コンプトン散乱後の散乱光子のエネルギーを求める重要な公式は確実に覚えておきましょう。

問7の鉄の線減弱係数を求める問題は2010年度の第二種試験の管理技術Ⅱでも出題されています。線減弱係数と質量減弱係数の関係をしっかり理解しておきましょう。

問8は中性子と物質の相互作用における反跳エネルギーに関する問題です。出題頻度が高い分野で重要な公式がありますので、公式を暗記して自分で計算できるようにしておきましょう。

問9は用語に関する問題です。放射線を勉強する上で用語や定義、また単位は基本です。確実に覚えておかなくてはなりません。

問10は計数率の標準偏差に関する問題です。計数値や計数率、またそれらの標準偏差を求める公式がありますので確実に暗記しておけば正答できる問題です。

問11 Ⅰは原子核の構造に関する文章問題です。陽子、中性子、電子の質量は暗記しておくと必ず試験で役に立ちます。是非覚えておきましょう。結合エネルギーと質量数の関係を表す図がありますので大まかな図は頭に入れておきましょう。核子当たりの平均結合エネルギーが質量数が60付近(Fe)で最大になること、またHeでも極大値をもつことは覚えておきましょう。(E)の放出されるエネルギーを求める計算問題は少し難しかったかもしれません。2015年度の第一種試験で類似の問題が出題されています。

Ⅱは64Cuの分岐壊変に関する文章問題です。分岐壊変に関する問題は64Cu以外にも40K、252Cfなどが試験ではよく出題されます。64Ni、64Znを生成する部分半減期は自分で計算できるようにしましょう。また壊変図の読み方も理解しておくことが大切です。

 

【化学】

問1は半減期から放射能を求める問題です。放射能半減期の関係を表す公式に代入して解きます。指数の計算が少し必要になりますので簡単な指数計算はできるようにしておきましょう。

問2はγ線を放出する核種に関する問題です。重要な放射性核種については壊変、半減期、エネルギーはしっかりと覚えておきましょう。本問題の32P、60Co、131Iは非常に出題頻度の高い重要核種です。90Yは放射平衡でよく出題されます。192Irはβ線γ線も放出する核種です。

問3は放射能から質量を求める問題です。放射能を求める公式に代入して解きます。放射能を求める公式は基本公式ですので確実に覚えておきましょう。

問4は壊変系列の中でウラン系列に関する問題です。4つの壊変系列についてはしっかり暗記しておきましょう。

問5は放射平衡に関する問題です。選択肢AからCはいずれも試験によく出題される重要な壊変です。永続平衡、過渡平衡をしっかりと覚えておきましょう。

問6は陽電子放出核種に関する問題です。PET核種は必ず暗記しておきましょう。22Naもβ+壊変する核種として試験によく出題されています。覚えておきましょう。3Hや63Niは低エネルギーβ線放出核種として重要です。

問7は主要な核種の半減期についての問題です。60Co、137Cs、241Amは半減期だけでなくγ線エネルギーも重要です。85Krのβ線192Irのγ線も厚さ計や非破壊検査に使用されます。

問8は除染の方法に関する問題です。化学的知識が少し必要ですので難しかったかもしれません。キレート剤は時々出題されていますので勉強しておくとよいでしょう。

問9は放射線を利用した機器に関する問題です。厚さ計、密度計、水分計、硫黄計はいずれも管理技術Ⅱの過去問題でも幾度と出題されてきています。

問10は水の放射線分解に関する問題です。生物の課目でもよく出題される分野です。水和電子、ヒドロキシルラジカル、還元剤、酸化剤などについて勉強しておきましょう。

問11は天然放射性核種に関する文章問題です。壊変系列を作る天然放射性核種としてトリウム系列、ネプツニウム系列、ウラン系列、アクチニウム系列の4つがありますが、α壊変、β壊変の数や最終の安定同位体を暗記しておきましょう。後半は壊変系列をつくらない天然放射性核種として40Kについて問われています。40Kは試験でも非常に出題頻度の高い重要核種です。半減期やエネルギー以外にもβ-壊変とEC壊変の割合、壊変後の核種を覚えておきましょう。部分半減期を計算する問題も出題されることもあります。

 

【生物】

問1はDNAの構造に関する問題です。最近はDNAやタンパク質に関する問題がよく出題されるようになっていますので、生化学について基本事項は押さえておきましょう。

問2は急性被ばくのしきい線量に関する問題です。骨髄死、消化管死、中枢神経死のおおまかなしきい線量は暗記しておきましょう。ヒトやマウスの半致死線量も合わせて覚えておきましょう。

問3は組織加重係数に関する問題です。ICRP2007年勧告の組織加重係数、放射線加重係数は必ず暗記しておきましょう。覚えておけばそれだけで得点になります。

問4は確率的影響に関する問題です。染色体異常や突然変異はしきい線量がないため確率的影響に、細胞死などはしきい線量が存在するため確定的影響になります。

問5は自然放射線に関する問題です。自然放射線量は年々変化することもあるので、できるだけ最新の情報で数値は覚えておきましょう。古い過去問題と最近の過去問題とでは正答が異なる場合もあります。

問6は直接作用と間接作用に関する問題です。それぞれの特徴、また間接作用の修飾効果は必ず暗記しておきましょう。

問7はDNA損傷に関する問題です。DNA損傷に関しては1本鎖切断、2本鎖切断などの修復も重要です。細胞周期と修復の関係もしっかりと勉強しておきましょう。

問8は細胞死に関する問題です。今年度2019年度では第一種試験の生物の文章問題で細胞死に関する問題が出題されています。増殖死や間期死、アポトーシスネクローシスについてはしっかりと覚えておきましょう。

問9は染色体異常に関する問題です。安定型、不安定型異常の種類、また発がんに関わる染色体異常は覚えておきましょう。また安定型、不安定型異常がどのような外観になるかも図で覚えておくとよいでしょう。

問10は致死感受性に関する問題です。直接作用や間接作用と合わせて致死感受性は覚えておくとよいでしょう。また細胞周期における感受性の違いも勉強しておきましょう。

問11 Ⅰは骨髄に関する問題です。末梢血中の種類や特徴は覚えておかなくてはなりません。また、照射後の時間と血球数の変化を表す図は重要です。概略図は自分で描けるようにしておくと試験で必ず役に立ちます。

Ⅱも骨髄に関する問題です。ヒトの半致死線量や骨髄の組織加重係数が問われています。造血組織である骨髄に関する問題は過去の管理技術Ⅰでもよく出題されている重要分野です。急性放射線症や放射線宿酔などとも合わせてしっかり勉強しておくことが大切です。